めまいが怖くて外に出られない 不安を克服する考え方と行動の方法を解説

浦和すずのきクリニックの鈴木です。


「また外でめまいが起きたらどうしよう」

そう思うと、出かけるのが怖くなる。

買い物、仕事、友人との予定。頭では「大丈夫」と思いたくても、不安が先に立って、一歩が出なくなる。

病院で検査を受けても「異常はありません」と言われる。

あるいは、PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)などの診断を受けてはいても、はっきりとした治療法がわからない。

薬も効いているような気がしないし、そもそも不安のせいなのか、病気のせいなのか、自分でもわからなくなってくる──。


そしていつの間にか、「まためまいが起きたら困るから」と、外出を控えるようになり、生活がだんだんと狭くなっていく。


誰かに理解してもらおうとしても、「気にしすぎじゃない?」「考えすぎだよ」と言われてしまい、余計に苦しくなる。


実はこうした状態は、めまいを経験した多くの人が通る共通の道でもあります。

そしてこの不安には、ある“心のメカニズム”が関係していることが多いのです。

この記事では「まためまいが起きたらどうしよう」という不安にどう向き合い、外出や日常の行動を少しずつ取り戻していくための考え方と実践方法をお伝えします。




めまいを「治す」ことが目的ではなく、生活の自由を少しずつ取り戻すことがゴール


「このめまいさえ治れば、また外に出られるのに」

「薬や治療でめまいをなくす方法を探さなきゃ」

そう思って、病院に通い、ネットで調べ、サプリや治療法を試してきた方も多いと思います。

でも、なかなか改善せず、かえって不安だけが大きくなってしまった……という声も少なくありません。



ここで一つ、回復に向けてとても大事な視点があります。

それは、「めまいそのもの」にばかり注目し続けると、かえって回復が遠ざかってしまうということです。

始めにめまいを経験したとき、たしかに強い怖さがあったと思います。

その怖さが記憶に残り「また起きたらどうしよう」「外で倒れたら困る」という不安が生まれます。

そうすると、人はその不安を避けるために、

・外出を控える

・人混みを避ける

・出かける前に体調を何度も確認する

といった行動をとるようになります。

つまり、めまいが直接の原因というよりも「めまいを恐れるあまり、生活を制限するようになってしまった」ことが、本当の苦しさの原因になっているのです。


もしあなたが「まためまいが起きるかもしれない」という不安に振り回されている状態で、めまいの根本原因だけを探し続けても、不安はなかなか減りません。

なぜなら、その時すでに苦しさの中心は症状そのものではなく「起きたらどうしよう」という不安や予想」に移っているからです。

・病院で異常なしと言われても不安が消えない

・めまいが実際には起きていなくても、予定をキャンセルしてしまう

・少しふらついただけで「また悪くなった」と考えてしまう

こうした反応こそが、生活の自由を狭め、さらに不安を強めてしまう原因になっています。

注目すべきは、「めまいを感じても動ける自分」を取り戻すこと

完全に症状を消そうとするのではなく、

「多少ふらつきがあっても、今日はスーパーに行けた」

「不安があったけど、外に出られた」

こうしたできたことを少しずつ取り戻していくことが、生活を広げる本当の回復につながります。

実際、めまいが多少残っていても、「不安に振り回されない自分」を育てていくことで、自然と生活が楽になっていく人は多くいます。




何が不安でどんなことが出来なくなっているかを整理しよう


めまいが起こると、どうしても不安がつきまといますよね。

「またふらついたらどうしよう」

「外出先で倒れてしまったらどうしよう」

そんな気持ちから、外に出るのをためらったり、やりたいことを我慢してしまうこともあるでしょう。

でも、今の状態で「何が怖いのか」「どんな場面が苦手なのか」をはっきりさせることは、とても大切です。

具体的に、不安が強くなる場面を書き出してみましょう。

たとえば、こんな場面はありませんか?

・通勤の電車に乗るとき

・スーパーや駅の人混みの中

・初めて行く場所や知らない道

・家族や友人と会う約束をするとき

そのせいで「やめてしまっていること」も書き出してみよう。



次に、その不安から避けてしまっている行動を書き出してみてください。

・買い物は家族に任せている

・友人の誘いを断ることが多い

・外出するときは誰かに付き添ってもらっている

こうして書き出すと、意外と「自分がどれだけ行動を制限しているか」が見えてきます。



次に、自分がどんな生活を取り戻したいかを考えてみましょう。

・一人で外出できるようになりたい

・電車に乗れるようになりたい

・気軽に友人と会いたい

ここが見えてくると「そのために何から始めてみようか」という小さな一歩が見つかります。

ただ、その一歩を踏み出そうとしたときに、ふと心の中でこんな声が聞こえてくるかもしれません。

「でも、まためまいが起きたらどうしよう…」

「外で倒れたら恥ずかしいし、助けてもらえないかも…」

でも、そこで立ち止まってしまう前に、少しだけ立ち止まって考えてみてほしいのです。

本当にその不安は、今の現実を正しく映しているのでしょうか?

次のセクションでは、そんな「心の中の予想」と「実際の出来事」を見分けるコツについて、一緒に考えてみましょう。





本当にそうなの?と思いなおすクセをつける


めまいの不安は、過去のつらい体験や、頭の中で描く最悪のシナリオから生まれやすいものです。

でも、その予想は本当に正しいのでしょうか?


たとえば、以前に外出先でめまいを感じて怖い思いをしたことがあるかもしれません。

その記憶が強いと、脳は「また同じことが起きる」と予測してしまいがちです。

しかし、よく振り返ってみてください。

あの時以降、倒れたり大きなトラブルになったことは本当にありましたか?

もし「いいえ」と答えられるなら、今思い描いている最悪のシナリオは、頭の中の予想に過ぎないかもしれません。

だからこそ、次の4つの質問を自分に投げかけてみましょう。

・過去の出来事は確かにあったけれど、今も同じことが必ず起きると思っているだろうか?

・過去の経験と今の状況は、同じだろうか?

・まだ起きていない未来に対して、不安を膨らませすぎていないか?

・想像だけで行動を制限していないか?

この問いかけを続けることで、だんだんと「心の中の不安の声」が、現実と違うことに気づけるようになります。

そして、「今はまだ起きていないこと」と分けて考えられるようになると、少しずつ不安に振り回されない自分に近づくことができます。




小さなお試しで予想を確かめてみよう


頭の中で「きっと大丈夫」と考えてみても、なかなか不安が消えないのは当然です。

なぜなら、私たちの心は、言葉よりも「体験」から学ぶことの方がずっと得意だからです。

そこで、ここからは少しだけ勇気を出して、小さな「お試し」をしてみませんか?

あくまで、あなたが心の中で立てている「怖い予想」が、本当に現実になるのかどうかを確かめるための、ささやかな「実験」のようなものです。

うまくいかなくても大丈夫。

「やってみたら、やっぱり大変だった」という結果がわかっただけでも、それはあなたにとって大切なデータであり、次の一歩を考えるための貴重なヒントになります。

ステップ1:これならできるかも?という目標を決める

まずは、あなたが先ほど書き出した「できるようになりたいこと」の中から、最も簡単で、一番怖くないものを選んでみましょう。

例えば、

・いきなり電車に乗るのは怖いから、まずは「駅の改札まで行ってみる」

・スーパーでの買い物が不安なら、「夕方のすいている時間に、お店の前まで行ってみる」

・一人での散歩が目標なら、「家の周りを5分だけ歩いて、すぐに戻ってくる」


こんな風に、具体的で、短時間で終わるものがやりやすいでしょう。



ステップ2:始める前に「どうなりそうか」を予想してみる

その小さな「お試し」をする前に、どんなことが起こりそうか、心の中の不安を正直に書き出してみましょう。

「きっと途中でめまいがして、動けなくなるに違いない」

「息が苦しくなって、パニックになりそうだ」

「結局、怖くなって途中で引き返してしまうだろう」

そして、その不安がどのくらい強いか、0点(全く不安はない)から100点(考えられる限り最悪の不安)で点数をつけてみてください。

これは、あなたの今の心の状態を知るための大切な記録になります。


ステップ3:実際に行動して、結果を振り返ってみる

準備ができたら、実際にその「お試し」をやってみましょう。

そして、家に帰ってきたら、何が起こったのかを記録してみてください。

実際に何が起きましたか?

「少しふらっとしたけれど、歩き続けることはできた」

「不安で心臓がドキドキしたけど、パニックにはならなかった」

「お店には入れなかったけど、外から中の様子を見ることはできた」



予想と比べてどうでしたか?

「『動けなくなる』と予想していたけど、実際はそんなことなかった」

「不安は80点くらいを予想していたけど、実際は50点くらいだった」

「周りの人は、誰も私のことを見ていなかった」



この振り返りこそが、回復への一番の近道です。

多くの場合、「思っていたよりも、大丈夫だった」「最悪の事態は起きなかった」という発見があるはずです。


この小さな「お試し」と「振り返り」を繰り返していくと、あなたの心には、頭で考えるだけでは得られなかった、確かな「体験」が積み重なっていきます。

「めまいを感じても、私は行動できる」

「不安になっても、何とかなるもんだな」

こうした小さな成功体験こそが、あなたの自信を育て、行動範囲を広げてくれる何よりの力になります。

結果的にめまいへの不安が減り、めまいに振り回されない生活を送ることができるようになってきます。


まとめ


この記事では、「まためまいが起きたらどうしよう」という不安の正体と、その不安がどのように私たちの生活を狭めてしまうのか、そして、その連鎖から抜け出すための具体的なステップについてお伝えしてきました。

大切なポイントをもう一度振り返ってみましょう。

・苦しさの原因は、めまいそのものよりも「また起きたらどうしよう」という不安にある

・ゴールは症状をゼロにすることではなく、「不安や症状があっても、やりたいことができる自分」を取り戻す

・頭の中の怖い予想が本当かを、ごく小さな「お試し」で確かめていくことが、めまいに振り回されない生活が手に入れやすくなる

もしも、一人で実践していくのが難しいときは、ご相談ください。

あなたに合ったプランを一緒に考えることができます。