強迫性障害はどれくらい改善するの?薬と認知行動療法の比較

浦和すずのきクリニック、臨床心理士の鈴木です。

強迫症(強迫性障害)の治療法で科学的根拠が十分にあるものは薬か認知行動療法です。

それ以外では明確な科学的根拠としては乏しい物ばかり。

セロトニンが増える食べ物食べても、サプリメント飲んでも、話を聞いてもらったり過去の親子関係が云々するようなカウンセリングを受けても、改善する可能性は低いのです。

だから薬か認知行動療法のどちらかを選択することをおススメしています。

ではどれくらいの効果があるのか?メリットやデメリットはどういうものがあるのか?まで知っている人は少ない印象です。

そこで今回は強迫症に対して効果があるといわれている薬と認知行動療法の特徴やメリットやデメリットなど比較してみました。

なお、厚生労働省が出している資料を使いながら解説します。

 薬が効くのは半分、再発率は7~9割

まずは薬から

薬物は導入や継続が容易で即効性が期待される反面十分な反応が得られない割合が比較的高く、副作用や中断時の再発が問題となります。

薬は飲むだけなので続けやすいのがメリット。

ここに書いてはいませんが、うつやその他の不安に効くこともあります。
ただ「即効性が期待される」と書いてありますがこれは誤解を生みやすいかと。

即効性というと飲んだらすぐに効くイメージする人が多いので。

一般的には効いてくるまで数週間かかる場合の方が多いし、増やしたり別の薬に変えたりしないと効かないこともあります。

デメリットはこんなことが挙げられています。
・結構薬が効かない人がいること
・副作用があること
・再発率が高いこと

このデメリットについての詳細はこんな感じ。

この中で薬物療法に関しては、従来、SSRIなど第一選択の抗うつ薬に中等度以上の反応性を示す患者さんの割合は約50%と考えられています。

しかし一旦薬物が奏効しても、自己中断などで服薬が途絶えた場合落ち着きのなさや悪心などSSRIの離脱症状に注意を要するとともに、再発率が70~90%と高率であることから十分な服薬アドヒアランスが維持されるよう配慮することも大切です。

・症状が半分くらいまで改善する人が50%
・ってことは、50%の人は薬があまり効かない
・薬を中断した時の再発率は70~90%

これって、結構衝撃的な数字じゃありませんか?
症状が半分くらいになるってのは「治る」ってわけではないですからね。
ある程度効果があるのは半分の人。
「薬飲んでも良くならない・・・自分って変なのかな」って思っている人いるんですよね。
別にそれは変ではなく、よくあることなんです。

しかも仮に良くなったとしても薬を中断した時の再発率は70~90%って・・・かなりの人が再発するってことです。
薬だけの治療の場合、長期間服用することがすすめられるのはこのためです。

 認知行動療法はやる気が必要だが、6~9割が改善

では認知行動療法についてはどんな風に書いてあるのでしょうか。

一方認知行動療法は、より有効性が高く効果の持続性や再発予防に優れますが、導入やアドヒアランスには、患者さんの状態や動機づけの程度などが大きく関わり、その効果は治療者の経験や技量にも影響されやすいという問題があります。

認知行動療法については前述したように、その導入やアドヒアランスには、患者さんの状態や動機付けの程度などが大きく関わってきます。

メリットは治療的効果、再発予防効果が優れてますよ~、

デメリットは、患者さんがやる気がないとできないし、カウンセラーの腕によってかなり左右されますよ~って書いています。

だから患者さんがやる気がないのに、家族が無理矢理「認知行動療法やりなさい」って言っても難しいのです。
また認知行動療法は医師やカウンセラーによってかなりの差がでます。
ですから治療者選びは大切です。

どれくらいの人に効くのか?再発率は?具体的な数字については・・・

もしプログラムの継続・完了が達成されれば、60-90%に何らかの改善をもたらし、そのうち75%では、その有効性が長期的に維持され、さらに薬物療法のみの場合に比べ、高い再発防止効果が期待できます。すなわち、いずれ薬物を減量していく場合でも、認知行動療法を予め学習し、曝露(不安の対象や状況への直面)、そして反応妨害(強迫行為の制御)を維持できれば、不安の増大や症状の再燃は、かなり予防できるものと考えられます。

・60~90%は効果ありますよ
・75%はそのまま良い状態を維持できてますよ
・だから薬を飲んだとしても認知行動療法を一緒にやると、再発予防で良いのですよ

効果は非常に高くて再発率も低い!

これをやらない手はないです。
ただここで注意!
「プログラムが継続・完了が達成されれば」の条件付き。
要するに途中で逃げ出したり、中途半端なやり方をしていてもなかなかうまくいかないってこと。

私の印象でも、きちんとやり通せば日常生活に支障がなくなる人が多いです。
「どうしても治したい!」って人は、認知行動療法をやることで、改善する確率がグンと上がります。

仮に薬を併用するにしても、認知行動療法をやることで効果的にすすめられる可能性が高くなるかと思います。

 認知行動療法を受けられるところが少ない

日本での強迫症の治療は薬物を最初にやることが多いです。

実地臨床の多くでは、うつ病の併存などで認知行動療法は当初困難であり、薬物を先行させ、治療的動機づけを強化確認後、認知行動療法に導入するといった併用療法が一般的です。

確かにうつ病などがある場合は最初から認知行動療法をやるのは難しい人もいます。

ただ、認知行動療法を少しずつやることで強迫が改善され、うつ症状も改善されることもありますし、認知行動療法だけで改善することもあるので、このあたりは人それぞれとなります。

十分に主治医やカウンセラーと話し合ってください。

「併用療法が一般的」と書いていますが、日本の医療機関では薬のみの治療で認知行動療法をすすめられることは少ないです。

これは認知行動療法を実施できるカウンセラーが少ないことが挙げられます。

「認知行動療法やってますよ」とホームページに書いてあっても、実際はできなかったり、専門ではないカウンセラーがやっていたりとなります。

だから「標準的な認知行動療法を受けらている人は運がよい」っていわれているのです。

あと「必要ならいつか認知行動療法すすめてくれるだろう」では、いつまでも薬だけの治療となることが多いです。
認知行動療法を希望する場合は主治医に自分から相談するか、自分で積極的に専門家を探さなくてはいけません。

 自分が受けようとしている治療法の情報を得ることは大事

以上のことって、基本的なところですが医療機関でも教えられることはほとんどないのではありませんか?

薬だけの治療に疑問をもち、他に良い方法ないか?と調べて、効果の乏しい治療法をしてなかなか治らないってことが多いです。

繰り返しますが、強迫症は薬か認知行動療法くらいしか効果的な方法はありません。

そこから外れないほうがよいかと思います。

知っている情報、知らなかった情報があると思います。
強迫症の治療の特徴を知った上で、今後に役に立ててください。

数字等の引用はこちらからしました。
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_compel.html

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