分析心理学セミナー

少し前に「分析心理学セミナー1925」という本を翻訳して出版しました。これは独自の心理学を築き上げたユングが
チューリッヒの心理学クラブで1925年に行ったセミナーの記録です。これを読むと当時の心理学がどのようなものだったのかがわかります。たとえば本書の中でユングは次のように述べています。

「分析は二流のアーティストにとって致命的なものとなりますが、分析がそのような作用を及ぼすのは、分析にとっては誇りとすべきことでしょう。分析の最中、あるいは被分析者の内側には、大仰なものばかりが現れますが、一方で、子猫や虫たちといったものがアートの世界の中には生み出されやすい。これは、私たちの時代の傾向なのです。」

ここでユングが「大仰なもの」と呼んでいるのは、まだだれも気付いてはいないけれども、人間の意識の在り方を変えるような発見のことを指しています。黎明期にあった当時の心理学は、まさにアートのように、まだ現実となっておらずに潜在しているものを明るみに出そうとしていたことがわかります。今や時代が変わり、現代の心理学はこのような精神を忘れつつあり、アートのほうがこのような発見をしているように思えますが、私たちももう一度このような精神を思い起こす必要があるのかもしれません。