
摂食障害(拒食症)
摂食障害とは
摂食障害には大きく分けて拒食症(神経性無食欲症:Anorexia Nervosa)と過食症(神経性大食症:Bulimia Nervosa)と呼ばれる、二つの種類があります。この二つの摂食障害は似ているところもあれば異なるところもありますが、ここではまず拒食症について中心的にとりあげ、過食症についてはまた別のところで取り上げることにします。
拒食症(神経性無食欲症)とは
WHOの発行している、ICD-10という診断基準では、神経性無食欲症とは体重(Kg)を身長(m)の二乗で割った数が17.5以下で、体重が増えることに対して恐怖を感じ、体重によって自己評価が影響される状態のことを指します。女性の場合は月経が三回以上なくなったりもします。体重を身長の二乗で割った数はBMI(The Body Mass Index)と呼ばれ、例えば身長が160cmで体重が55kgの人は55÷(1.6×1.6)で、BMIは約21.5になります。19から25の間が普通の値です。
「神経性無食欲症」という名前から、食欲を感じないのか、と思ってしまうかも知れませんが、実際には「食べたい」という衝動は大変強いものです。そしてこの衝動が抑えられないのではないか、いったん食べだしたら自分では食べることを止められなくなり、体重が際限なく増えてしまうのではないか、と恐怖を感じます。そのため、全く食事を取らない人や、大量に(時には10000Kcalを超えるほど)食べては自分で無理に吐いたり、下剤を乱用して食べた食事を外に出そうとします。当然身体にも影響が出ます。よくみられるものに筋力低下、消化器症状、電解質異常、骨粗鬆症などがあります。
摂食障害(拒食症)の原因
摂食障害の原因には様々なものがあり、一つの側面だけを取り上げてこれが原因だ、ということはできません。摂食障害に何らかの影響を与えている、と思われるものがいくつかあるだけです。ここではそれをいくつか説明していきます。
まず、摂食障害になるきっかけは、ちょっとしたダイエットがきっかけのことが多いです。はじめは少し痩せられればいいと思っていても、食事を取らずに一度飢餓状態になると、正常な思考ができなくなってきます。そして当初の目標を達成しても、食べるとまた元の状態に戻ってしまうのではないか、と考えるようになり、食事の量を元に戻すことができなくなります。
そして、ダイエットのきっかけを作るような、社会的な状況があります。これはただ、痩せていることを美しいと思うというだけではなく、痩せていれば社会的に成功するとか、痩せている方が健康であるとか、痩せている方が意志が強いとか、そう考える社会風潮がダイエットのきっかけを作ることになります。そして痩せていることが自尊心と結びつくことになります。ところが実際には極端に痩せている人は健康とは程遠く、社会的に成功するとか自立しているとかいったこととは無関係であることは客観的に考えればわかることだろうと思います。
そして今までの生育歴や家族のことも関係します。極端に痩せると身体の中のホルモンのバランスが崩れ、子どもの身体に近くなります。何らかの大人になることを妨げるような出来事や、子どものままでいることを望むような周囲の環境なども摂食障害に影響します。また、完璧主義や強迫的な人も摂食障害になりやすいと考えられています。そして、拒食や過食は自分を完璧な存在にしようとすること、そうなれないならば死んで新しい出発をしようとする試みとして理解できる場合もあります。
このように、色々な原因が考えられますが、上のような原因がぴったりと当てはまる場合は実際には少数です。多くの場合、人それぞれの原因をカウンセリングの中で見つけていく必要があります。
摂食障害(拒食症)へのカウンセリング
摂食障害(拒食症)へのカウンセリングには、家族療法、精神分析的心理療法、行動療法など、たくさんの方法がありますが、決定的に有効とされるものはなく、どうしても長期にわたることが多くなります。場合によっては生命の危険性が生じることもあるため、医療機関への入院を勧めることも起こってきます。ただし、入院はあくまで栄養を回復させることが第一の目標となるため、やはりカウンセリングを行うことが大切になります。そして当然のことですが、入院をする場合もご本人が納得した上で入院することが大切です。
どのような方法を取るにせよ、まずは摂食障害が治るとはどういうことかを考えていくところからはじめることが多くなります。摂食障害が治るということを、自分の体重がコントロールできなくなり体重が増えること、つまり自分の恐れていたことが実現してしまうこととして捉えている場合があるためです。そのため、治るとはどういうことか、よくカウンセラーと話し合うことが大切になります。そして目標を納得した上で、カウンセラーと共同でその目標に向かっていくことになります。
そしてご本人が、摂食障害とはどういうものだと思っていて、どうなりたいのか、今までどのように摂食障害と付き合ってきたのか、カウンセリングを受けることについてどう思っているのか、などについて、自分の言葉で話すことが大切になります。というのも、摂食障害の状態では、自分の今の状況を冷静に考えるためには、あまりにも色々なことが複雑に絡み合っているように感じているため、一つ一つの問題を解きほぐす必要があるからです。例えば体重のことが自尊心と絡み合っていたり、食事を取ることと家族関係や人間関係が絡み合っていたりします。そうした食事のことと他のこととのつながりは、他の人にはもちろん、ご本人にとっても気づかない、意外なことだったりします。そのため今自分がどういう状況にあるのかわからずに、混乱してしまうということが起こってきます。しかし、感じたことやふと考えに浮かんだことを話しているうちに段々とつながりがご本人とカウンセラーの間で見えてくることになります。
参考文献
Palmer,R.L. 2000 Helping People with Eating Disorders. John Wiley.(佐藤裕史訳 2002 摂食障害者への援助 金剛出版)
Samuels,A.(ed.) 1974 Psychopathology: Contemporary Jungian Perspective. H.karnac Books Ltd.(氏原寛・李敏子訳 1991 こころの病理学‐現代ユング派の臨床的アプローチ 培風館)
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